以前、こんな話を目にしたことがある。
①「2800万世帯が白熱電球1個をLEDに変えると、原発1基分相当の節電ができる」
しばらくしてから、こんな話も聞いた。
②「日本中の照明(白熱電球や蛍光灯など)をLEDに変えた場合、原発が13基いらなくなる。」
これらの話を聞いたとき、思わず「へぇー。」と驚いた。
我が家は、すでに照明をLEDに変えていたので、何だか嬉しい気持ちになったのだ。
ところが、最近、この話を思い出して疑問に思った。
「はたして本当だろうか」
というのも、この手の話は、結構大げさな情報であることが多いものである。LED業者の回し者でもいるのではあるまいか。
気になったので、自分なりに調べて計算してみた。
まず、この計算の元になりそうな資料は・・・、と調べてみたところ、(財)日本エネルギー経済研究所の以下の資料に行き着いた。
http://eneken.ieej.or.jp/data/3862.pdf
まぁ、だいたいの推測なので、別に完璧を求める気もなく、なんとなく計算が合えばよいと思う。
たとえば、我が家のように、もとの白熱電球が40W、購入したLEDが4Wで、合計4つの電球を変えた場合。
40-4=36W×4で合計144Wの節電。
電力量(Wh)=電力(W)×時間(h)なので、この電球を1時間使ったとすると、「144Wh」の節約ということになる。
もし、電球を2個変えたのなら「72Wh」
仮に、平成22年の日本の世帯数「5195万504世帯」が家の白熱電球2個をLED電球に変えたとすると、
51,950,504×72=3,740,436,288
合計37億4043万6288Wの節電という計算になる。
これをKWにすると、約374万436KW。
一方の原発は、古いものと新しいもので発電量が違うようだが、以前に見た記事から計算してみると、1台あたり約92万KW。
この計算だけで比較すると、約4倍の節電である。
つまり、原発4基がいらないような数字になる。
2800万世帯は約半分なので、元になる電球の数を増やせば、先ほどの①の話も出てくるかもしれない。
ただ、一点、白熱電球で注意したいのは、「普段ほとんど点灯しない」ということだろう。
人や場所によるかもしれないが、我が家の白熱電球タイプの照明は一日に1時間も点灯しない。
一方の原発は、1日の平均稼働率が約7割くらいだ。
たとえば、関西電力を参考にしてみると、平成23年度は半分に減ったようだが、22年度稼働率は7割以上で、原発11基分の年間発電電力量は約669億5000万KWh。
1基あたりの平均にすると、約60億8000万KWh。
365日で割って、一日計算にすると、1日約1667万KWhの発電ということになる。
さきほどの計算で出た374万KWhで比較した場合、今度は原発のほうが4倍以上も大きくなる。
したがって、白熱電球だけを考えた場合は原発一基分にならず、①の話はあやしい計算だということになる。
次に②だが、こちらは蛍光灯も含めての話なので、なんとなくあり得そうな感じがする。というのも、家庭や企業で良く使うのは蛍光灯のほうだからだ。
以下、計算してみよう。(なんとなく計算できるサイト→http://www.tec-led.jp/contents/simulation.html)
蛍光灯1本をLEDシーリングライトに変えた場合、白熱電球ほどの節電にはならないものの、使い方によって消費電力が半分くらい(15W~50Wくらいの節電)になる。
仮に、6畳の部屋の蛍光灯(90Wの消費電力)をLEDライトに変え、消費電力が約半分(45W)になったとする。
そして、蛍光灯の場合、一日の半分くらいは点灯すると考えて、45W×12時間=540Wh
3部屋分変えたとすれば、540×3=1,620Wh
一日1,620Whの節電ということになる。
これを仮に日本中が実行したとして、1,620×51,950,504=84,159,816,480Wh。
KWhになおすと、1日あたり約8,416万KWhの節電ということで、かなりの電力を節約できる。
先ほど出した数字と比較すると、原発約5基分がいらない。
これに加えて事業所などを考慮していけば、その数字はさらに増える。
たとえば、うちの職場は、蛍光灯50本を使っているので、540Wh×50本=27,000Wh
日本にある事業所が約600万。
27,000Wh×6,000,000=162,000,000,000でKWhになおせば1億6,200万Kwh。
なんと原発10基分くらいの計算になる。
したがって、②の話はかなり真実味をおびている。基準や計算方法を少し変えれば13基という数字も出てくるのだろう。
もちろん、全国5000万世帯、600万事業所全部を変えるのは簡単なことではなく、気が遠くなるような話だ。それに要する費用もハンパじゃなく、現実離れしている感がある。
しかし、照明一つでこれだけの数字が出るわけだから、国や自治体、国民が本気になって取り組めば、原発のない社会なんて、そう難しいことでもないのである。
「未来のことを考え、エネルギーや環境を大事にし、たとえ費用が高くてもLEDにしよう」なんて人は、照明以外でも必ず節電するものだ。
つまり、「日本中の照明をLEDにする」という力強い気持ちで社会が動き出せば、その影響は照明だけにとどまらず、照明以外の各種方面に対する節電効果も出てくるはずなのである。
したがって、我々が未来のことを真剣に考えるのならば、照明はLEDに変えていくべきだと筆者は思う。
その際にかかる費用は、将来を考えてみれば実に安い投資だ。一人一人の出費で考えたら、たいした額でもない。長年使えば元も取れる。
さらにいってしまえば、「原発ゼロは難しい、大変だ」という意見は、目先の金銭や自分の利益、既得権に依存しているだけなのである。
意識ある人、心ある人には、まず自宅の照明をLEDに変えること。これをお薦めしておきたい。
こんな簡単なことでも、集まれば大きな力になるのだから。